ドローンで農薬散布!?何が変わる?何が必要?農業の未来の姿

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ドローンが田んぼの上を飛んでいる姿を見ることも多くなってきましたね。

今は、果樹などもドローンによる農薬散布が広まっており、活用される機会が増えてきています。

ドローンによる農薬散布事業をはじめたいと考える人も増えていますが、実際どんなことが必要なのでしょうか。

この記事では、ドローンによる農薬散布の現状を網羅的に紹介していきます。

必ず最後まで読んで、ドローンを使った農薬散布の現状を知ってください。

この記事で解決する悩み

  • ドローン散布のメリット、デメリットは?
  • ドローン散布の注意点はなに?
  • 準備には何が必要?
  • 単価などの現状はどうなってるの?

従来の散布方法との違い、メリット・デメリット

害虫対策の為の農薬散布は、今までも様々な方法で行われてきました。

時間、費用、体力面、散布方法でそれぞれ抱える課題もありました。

ここでは、従来の散布方法との違いや、ドローンを使った農薬散布のメリット、デメリットを紹介していきます。

従来の農薬散布方法と課題

代表的な従来の散布方法とそれぞれの課題は以下のようになっています。

散布機材散布方法課題等
動噴人が散布機を背負って行う広い圃場は時間がかかる
ブームスプレイヤートラクターに搭載して広範囲に散布できる圃場内にトラクターを走らせる道が必要
無人ヘリ広い圃場に一気に散布ができる狭い圃場には不向きでドリフトが発生しやすい

これらに代わって最近、登場したのが、ドローンで農薬散布です。

ドローンの農薬散布には、下記のような特徴があります。

  • 小回りが利くので狭い圃場でも散布ができる
  • ダウンウォッシュ(プロペラから下方へ吹き下ろす風)の力がヘリに比べて弱いので、低空飛行でも稲を痛めない
  • ダウンウォッシュを利用して農薬を、作物の下方へ吹き付けるられる

このように、従来の散布方法に比べて楽に散布が行えることから、ドローンによる散布事業は広がっています。

ドローン農薬散布がもたらす3つのメリット

従来の農薬散布方法と比べて、ドローン農薬散布がもたらすメリットはいくつかあります。

この記事では下記の3つのメリットに注目して、メリットを紹介します。

  • 効率化
  • 高品質か
  • 安全性向上

それぞれのメリットをみていきましょう!

効率化:作業時間短縮、人手不足解消

農業分野では、高齢化や担い手不足が大きな問題となっていますが、その対策の一つとして、ドローンが注目されています。

作業の効率化により、今まで何日も必要としていた農薬散布による防除作業が、短時間で終わるようになりました。

方法によって必要な時間は変わってきますが、平均して1/3ほどの時間短縮が実現しています

高品質化:均一散布による品質向上、ドリフト減少

ドローンは、ダウンウォッシュ(プロペラから下方へ吹き下ろす風)を使って、狙った場所や農薬を吹き付けたい箇所に吹き付けることが出来ます。

ドローンの農薬散布は、ヘリによる散布に比べ他の圃場に農薬が飛散してしまうドリフトが起きにくいのが特徴です。

また、ヘリに比べてダウンウォッシュの力が弱いので、稲を傷めずに低空で飛行できます。

ドローンを使った農薬散布により、素早く均一に散布ができるのもメリットの一つです。

安全性向上:危険な場所での作業回避

農薬は安全性を考慮して作られていますが、人体への影響を完全にゼロにすることはできません。

従来の方法だと、散布中に飛散した農薬が人にもかかってしまうことが多くありました。

また、果樹など斜面で作る作物は、重たい動噴を背負って行う農薬散布時には危険も伴います。

ドローンを使うことで遠隔操作で散布ができ、飛散も少ないことから、より安全に農薬散布ができるようになりました。

デメリットと4つの注意点

メリットについて、紹介してきましたが、デメリットについてもしっかり認識をしておく必要があります。

ここでは、ドローンによる農薬散布事業を行う際に直面するデメリットについて紹介していきます。

農薬散布にて考えられるデメリットは下記の4つです。

  • 初期費用
  • 法規制
  • 周辺環境への配慮
  • 限られた農薬

マイナス面もしっかり勉強しておこう!

初期費用:ドローン本体、周辺機器、メンテナンス費用

農薬散布用のドローンは、性能によって数百万~数千万まで様々です。

農薬散布事業を始める時には、主に以下のような費用が必要となってきますので、参考にしてみてください。

  • 機体(予備機含む)
  • 予備バッテリー
  • 充電用の電源
  • 農薬を希釈する為の器材
  • 軽トラック
  • 機体のライセンス取得費用
  • 機体の年次点検(メンテナンス)費用
  • 補助者の人件費

散布用のドローンを購入する時には、ほとんどの場合、その機体のライセンスを取得する必要があります。

これは、メーカーが安全運航を担保するために、オリジナルのカリキュラムで発行しているもので、具体的な操作方法、散布量や、散布幅の設定方法などが学べます。

機体を取り扱っている販売代理店やスクールで受講でき、費用は平均で20万円ほど必要です。

また、農薬散布機はメーカーの年次点検が必要です。

これにも1回10万円くらいの点検費用がかかってきます。

法規制:航空法、無人航空機の許可・承認

ドローンなので、もちろん法規制についてもしっかり理解しておく必要があります。

航空法では、主に以下の許可を取得しておく必要があります。

  • カテゴリーⅡB
  • 人・物30
  • DID
  • 夜間
  • カテゴリーⅡA
  • 危険物輸送
  • 物件投下(投下実績5回以上)

農薬散布は、早朝から行うので、明るくても日の出前の時刻は「夜間」に該当するので気を付けましょう。

その他にも、離発着場所が道路上になることもあります。

ほとんどの場合、農道なので比較的容易に許可を取得できますが、事前調査をしっかり行い、状況に合わせて道路の使用許可を取得しておく必要があります。

事前準備もたいへんそうですね

周辺環境への配慮:騒音、近隣住民への理解

農業がおこなわれている場所での飛行ですので、ドローンの飛行についても周辺住民の理解も得やすいとは思います。

しかしドローンを飛ばす前は、事故防止のための注意喚起は必要です。

ドローン自体はまだ、物珍しいものなので、通行人が飛行エリアに近づいてくる場面も多くあります。

また、洗濯物を干していたりすると、農薬がかかってしまう可能性があるので、事前に取り込んでもらったりしなくてはいけません。

農薬散布をする当日も、常に周りの状況を確認し、注意喚起やお願いをしながら行う必要があります

実際に農薬散布中の事故も、頻発していますので、事故防止の対策を必須です。

使用できる農薬が限られる

2024年時点では、特に稲に使えるドローン用の農薬の種類も増えてきましたが、果樹など、その他の作物に対応した農薬の種類が少ないのも現状です。

これから、ドローンが活躍する機会は増えていますので、合わせて使える農薬の種類も増えていっています。

ドローンで使える農薬は、農林水産省のホームページから確認できます。

▶︎【農林水産省資料】ドローンに適した農薬一覧

導入までの流れをステップで解説

ここでは、実際にドローンによる農薬散布を始める為に必要な項目を、ステップで紹介していきます。

一つずつ確認をして、段階を踏んで、事業化を進めていきましょう。

周辺調査と営業

自分のエリアでどれくらいの圃場があるのか、ドローンが活躍しているかなどの事前調査は必須です。

需要が無いところで始めようとして失敗している例がたくさんありますので、まずはお客様がいるのかどうかをしっかり調べましょう

STEP
1

機体選択とライセンス取得

ドローンを導入できると判断できたら、次は機体を選択し、その機体のライセンスを取得する必要があります。

値段も気になるところではあると思いますが、性能や特徴を見て、その地域の圃場や、散布予定の作物にあったドローンを選択しましょう

STEP
2

機体や備品の購入

次は、機体や周辺設備を取り揃えます。

必要に応じて補助金などを使うと負担も減らせるでしょう!

農薬散布機は、バッテリーの消耗も激しいので、予備のバッテリーや、バッテリーを充電する為の発電機も必要です。

バッテリーがないと仕事が何も出来なくなります。

もしもの時の為の予備機も検討しておきましょう。

STEP
3

許可承認申請

機体を購入したら、撮影用のドローン同様に許可承認申請が必要です。

農薬散布は「危険物輸送」「物件投下」に当たります。

これら2つも包括申請で取得可能ですので、圃場周辺の状況に応じて、その他必要な許可承認を受けましょう。

STEP
4

チームを作る

農薬散布は1人ではできません。

特に補助者の役割は重要で、農薬散布機のドローンの特性を理解しておく必要があります。

その他、必要に応じて、ドローンの運搬や農薬の充填などの補佐をしてくれる人がいると、作業がスムーズに進められます。

第三者が飛行エリアに近づかないように注意喚起する人も必須です。

STEP
5

以上が、農薬散布を始めるまでのステップです。

個人で始めようと考えている人は、まずは農薬散布の現場を経験することをオススメします。

冬から春にかけて、アルバイトの募集が増えるので、ぜひ一度経験してみてください!

ドローン農薬散布を成功させるために知っておきたい運用ノウハウ

ドローンをはじめる前に、いくつかのポイントを紹介していきます。

ここで紹介していることは、経験しないとなかなか分からないことですので、しっかり学んでおきましょう。

圃場ルートの確認

農薬散布は、どの圃場も同じような時期に行われるので、複数の圃場を回ります。

また、散布時間も朝方から昼にかけてと、時間が限られるので、効率の良い散布が求められます。

事前確認をしっかり行い、効率よく回れるルート設定をしておきましょう。

離発着場所や飛行ルート設定

ドローンの離発着場所や飛行ルートについても予め設定しておいた方がスムーズです。

特に離発着時は事故が起きやすいので、できるだけ広い場所を選定しましょう

また、薬剤の量も計算して準備しておかないといけません。

ドローンの散布量や散布幅と圃場の広さから計算し、少し余裕を持っておくと良いでしょう。

トラブル発生時の対処法

トラブル発生時の対処法を考えておくことは必須です。

もし怪我などした場合の連絡体制や、対処方法はもちろんのこと、ドローンが壊れた後のことも考えておく必要があります。

ドローンが1機だけしかないと、事故を起こした時に仕事ができなくなってしまいますので、予備機は準備しておきましょう

実際に、筆者も事故を数回経験していますので、十分注意が必要です。

よくあるトラブルランキング

1位:操作ミス

よくあるトラブルの1位は操作ミスです。

離発着時にドローンの向きが反転していて、間違った方向に移動してしまって壁に激突したりという事がよくあります。

機体が大きい分、自分の風の影響をうけやすく、離発着時に機体がバランスを崩しやすいです。

必ず周囲の安全確認と、機体の向きを確認してから離発着させましょう。

2位:センサーオフ時の接触

狭い圃場だとセンサーが邪魔をして隅までしっかり散布できないことがあります。

動噴で撒くことも検討するべきですが、人が入れないような場所はセンサーをオフにして散布することもあります。

木の枝などの見えにくい障害物に接触して墜落することもよくあるトラブルですので、補助者としっかり連携をとって散布しましょう。

3位:着陸時の横転

着陸場所が畦道などの狭い場所しか選定できない場合は特に注意が必要です。

撮影機でしたら、倒れたくらいで壊れることも少ないですが、農薬散布機は自重が重たいので、倒れるとプロペラやアームが折れます

4位:バッテリー劣化による墜落

夏場の暑い時期に行うので、劣化したベッテリーを使っていると、急に電圧が下がって墜落することもあります。

トラックの荷台で充電しながら散布作業を進めることになりますが、バッテリー管理は十分注意しましょう。

実際に国土交通省のドローン事故報告の一覧をみて、農薬散布中の事故も多いです。

事故対策についてもっと知識を深めたい人はこちらの記事を参考にして下さい。

▶︎ ドローン事故と重大インシデント!報告例から学び信頼ある安全運航につなげる

ドローン農薬散布の未来

ドローンによる農薬散布は、水稲に始まり、果樹にも多く活用されてきています。

また、ドローンに対応した農薬も増えてきているので、今後もますますドローンによる農薬散布は広がっていくでしょう。

自動航行とデータ活用

広い圃場では、自動航行機能が使われており、人が操縦することも少なくなってきています。

また、マルチスペクトルカメラを使って生育状況を分析し、ピンポイントで肥料を撒いたりすることも行われており、AIを使った農業は加速しています。

RTK機能を使った後付けの装置をトラクターなどに搭載し、水掻きや刈り入れも自動化が進んでいます。

全行程の自動化

通常、水稲は稲を作ってから田植えを行いますが、種を直接圃場に撒く、「直播」も行われています

今後は、全ての工程が自動化されていき、人手不足の解消、安定した食糧生産ができるようになっていくでしょう。

ドローン農薬散布の現状

実際、農薬散布の現状はどうなっているのでしょうか。

個人ではじめられるのか、どこかに所属するべきなのか、様々な視点から判断できるように参考にしてみてください。

JAとの提携を考える

農薬散布で事業を大きく展開する為には、JAと協力することも考えられますが、ほとんどの地域で、提携先が決まっているのが現状です。

農薬散布事業だけで生計を立てようとおもうと、相応の広さの散布を行う必要があるので、個別で契約できるのか、それともどこかの下請けとして安定を目指すのかなど、検討しましょう。

その他の事業を展開する

農薬散布だけでは難しい場合、散布機のスクール運営や、散布機の年次点検を請け負うこともできます。

相応の知識や技能が必要にはなりますが、派生して展開できる事業も考えると、実現性がでてくるでしょう。

チームをつくる

前項でも記載しましたが、農薬散布は一人ではできません

最低でも2人は必要ですし、圃場が広くなれば、複数チームを動かさないといけません。

3人のチームで駆けずり回って散布したとして、1日で散布できるのは20町くらいが限界でしょう。

単価

地域によって差はありますが、平均単価は以下のようになっています。

  • 1反:10r(10m×10m)1,000円~3,000円
  • 1町:1ha(100m×100m)10,000円~30,000円

ここから計算して、あなたが行おうとしている場所で、必要な金額を稼ぐための圃場が確保できるのか、関連事業の収益も含めて計算してみてください。

まとめ

ドローンによる農薬散布はこれからも広まっていきます。

大きな圃場がある場所で、ドローンの導入がされていない地域はチャンスかもしれませんね!

先行投資が必要だったり、チームを作る必要があったりと、ハードルは高いですが、農業自体が無くなることはありません。

農薬散布事業を検討されている人は、しっかり計算して、補助金などの活用も考えましょう!

今後もドローン国家資格に関する情報や、ドローンに関する有益情報を発信していくので、ブックマークしておいていただければ幸いです。

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